rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第16章 teardrop afterⅤ
ナッシュに対してかまをかけるなんて荒業、ましてや小細工だってきっと通用しない。
どれだけ恐ろしい男かなんてことは、身体がよく知っていたのだから。
名無しは、女の肩に手を回したままだったナッシュの今現在の素行にも嫌悪を持ったけれど、女がいる以上、何かをしてくることはないという妙な自信も持っていた。
それこそ信憑性は低い・・・が、車中やシルバーの部屋で仕出かしたような真似をまさか今やるとは思えなかったのだ。
少し前まで食事をしていた彼が居たというのに・・・もう既に過去のことになっていて笑いさえこみ上げてきそうになる。
名無しが男と会っていたことを見抜いていたナッシュは、その悪い表情と口ぶりで彼女を冷やかしたけれど、名無しは素知らぬふりをしてナッシュに背を向けていた。
賭けなんて怖すぎる――なのに彼女の振った賽の目は、賭けろと訴える。
歩み出した足を名無しが止めたのは、ナッシュがシルバーの名をそこで初めて口にしたからだった。
そして続けられた言葉に、名無しは目を見開いた。
「・・・っ・・」
「だんまりされようが、アタリだろうよ・・・しばらくチームで此処を離れてたからな。オレだってまだ他の女に会ってねえよ」
「・・・・」
「・・・あのバカ、酔った女に、寝てる間に自分の電話のデータを消されたんだとよ・・・見事に暴れ倒してたが、その理由まではおまえには分からねえんだろうな」
「、・・・・?」
「挙句、傑作だったのは女どもがこぞって口にしてたことだ・・・ベッドで何度も呼び間違えてたんだと。・・・おまえの名前だよ・・名無しチャン?」