rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第16章 teardrop afterⅤ
「おい」
「・・・!」
下着のなかが今更むずがゆい。
頭のなかが今更ピンク色に染まる。
思い出した日々は地獄そのものなのに、震える身体は気温にそぐわず、悪寒さえ感じた。
「あ・・・」
「どうにもオレはタイミングが合わねえらしいな・・どうせ会うなら、一人のときにしてくれよ・・・フッ」
「ッ・・・」
名無しは鳥肌の浮いているであろう自らの腕に片方の手のひらを宛がい、何度もそれを往復させて摩擦を続けた。
さっさと立ち上がって自分も帰路を行こう、思考能力がまともなうちに・・・そう思った矢先に、背後から超の付くほどの低音が響く。
その声色の低さに対し、振り向かずして感じたのは相手の高圧的な態度。
何より、聞き覚えが嫌というほどあったのだ・・・その声の主はすぐに分かった。
だからこそ、振り返ることを恐怖に感じた名無しだったのだけれど、同時に彼女が抱いてしまったのは、悔しさを含んだ淡い期待――。
「・・・っ・・」
「!・・・フッ、なんだ・・その男受けの良さそうな格好・・。デートにでも行ってたのかよ?」
「・・・自分だって・・、・・・ッ・・」
名無しの居た歩道に偶然通りかかったのはナッシュだった。
ただし、その隣には見知らぬ女性が一人。
夜道、皮肉にも名無しがまだ正気を保っていられた理由がそれだった。