rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第15章 teardrop after Ⅳ
上下の服の皺を伸ばす。
涙目になって、それでもこれ以上傷つけられないという思いから見つめた、彼の瞳もまた少し潤んでいた。
ドアに手をかけたとき、もうこの車を降りれば、次などないということは漂った空気で分かる。
彼がどう思っているかじゃない・・・名無しがもう、彼とは終わりだと感じたのだ。
イエスともノーともとれる微妙なニュアンスの返事をして、静かに車を降りた名無しは、乱されていた髪もその場で整えて、
助手席の窓を少し開放した彼に微々たる笑顔を作った。
「本当にオレが悪かったよ・・・名無しが気に病むことなんてないから・・」
「ありがとう・・・ごめん・・」
「・・、・・・連絡、待ってるよ。・・・おやすみ」
「・・・おやすみなさい・・――」
もしかしたら、このひとはすべてを受け入れてくれるかもしれない。
すべてを話しても、悪夢を見ないように、忘れさせてくれるかもしれない。
そんな甘い考えも儚く消えたのは、車が発進しながら窓が閉じられて、やがて見えなくなるにつれて身体が火照っていたから。