rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第15章 teardrop after Ⅳ
「・・・車が、何かダメだったのかな」
「ッ・・・違う・・だって、・・・別に私、あなたのこと・・・その・・・」
「・・・そう・・、・・・――名無し?」
「え・・?・・・ッんん・・」
印象は最初が肝心、の延長線だろうか。
彼はわざわざ助手席側にまわると、名無しが乗るべきそこのドアを開けエスコートした。
すんなりと片足を踏み入れたとは言えたものじゃなかった。
けれど、名無しも結局、数秒戸惑うだけでそのまま乗車を決意していた。
助手席のドアを閉めた彼は運転席の方へと向かい、再び車内で顔を合わせたときの、隣に座る名無しの横顔を黙って見つめる。
名無しは、不安を抱えた心情を察したらしい彼に視線を向けられると、自身の膝をスカートの中で擦り合わせ、そっと目を伏せた。
握り締めていたのはシートベルト・・・が、そこに伸ばした手に重なったのは、彼の大きな手だった。
続けて重ねられたのは互いの唇で、シートベルトを外される音もそのとき、車内で淡々と響いていた。