rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第15章 teardrop after Ⅳ
「・・・っ・・」
「・・・どうかした?」
「・・あ、の・・・車・・、・・・今日」
「!ああ・・・そっか、待ち合わせ・・店の前だったから・・・。そうだよ?」
「・・・・・」
名無しは彼の言葉の意味を、てっきり駅までとばかりに捉えていた。
だから路肩のパーキングへ向かって、とある車の前で立ち止まった瞬間、驚くしかなかった。
「・・・・」
今思えば、車を持っていると言う話をしたのかもしれない。
それは名無しが、相手との会話を右から左に聞き流していたから、曖昧にしか思い出せなかったのだろう。
「どうかした?」
「っ・・・ううん・・平気。・・・お言葉に甘えるね・・」
「・・・?」
彼は自分をどこまで送るつもりなのだろうか。
すぐそばの駅か、家の近くか・・・それとも。
よぎるのは、出来れば帰りたくないという強い気持ち。
なるようになれとしかもう考えられなかったから、この身をさっさと、あの男やその連れ以外に組み伏せられたかった。
ただ、そうは思っていても、この鉄のかたまりを目の前に、名無しは些か不安を憶えた。
形は違えど、車に乗るのは、あの日以来だったから。