rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第11章 teardrop afterⅡ-4
ナッシュにとって冗談はあくまで冗談だ。
名無しの胸のうち、本音を引き摺りだそうとはしていても、茶化すことが根底にある。
ぐったりとした彼女が一瞬動揺を見せたとしても、別に彼にとって名無しは有象無象の女に過ぎなかった。
それを知ってか否か、わざわざシルバーが実際釣られたことで、ナッシュはいかに彼が名無しを気に入っているかを再び実感していた。
惚れているくせに、簡単に自分に抱かせるそのクレイジーさを非難しないのは、それがシルバーだからの一言に尽きる。
シルバーは若干焦りながらナッシュに迫り寄ったけれど、元々此処に来ていた本来の要件を含め、事は安易におさまった。
「またな、名無し」
脱いだものを羽織り、ベルトを締め直す。
乱れた髪は手櫛で整える。
その後まもなくして、ナッシュは来た時と同じ状態、自身の支度を終えると、吐き捨てた名無しへの言葉を最後に、シルバーの部屋をあとにした。
そのときの名無しは、ナッシュが帰ってホッとするというよりは、またシルバーと二人きりになってしまったと、ただただその事実を嘆かわしく思うだけだった。