第12章 思惑
「秀吉・・・・!」
信長「一度戻れ、秀吉。」
「必要ありません」
・・・っ
敵三人が一斉に振り下ろした凶刃を、秀吉が一刀で受けた。
腕一本で押し返す傍ら、敵が刀を手に切りかかる。
敵4「まだまだ・・・・!」
だめだ・・・・!!
声もなく叫んだつぎの瞬間、
「いや、終わりだ。」
繰り出された刀を見もせず、秀吉が片腕を打ちふるう。
あ・・・・・っ
迷いもなく刀を腕で払いのけ、そのまま拳を敵の腹部に叩き込んだ。
敵4「か、は・・・っ」
刀を取り落とした敵の半身が、馬のたてがみに沈む。
同時に、刃に触れた秀吉の腕から鮮血が滴った。
っ・・・・馬鹿な戦い方を・・・・
一歩間違ったら、ひじから下を失っていたかもしれない。
敵1「なんと・・・・っ」
敵2「お前、捨て身か・・・?!」
「腕一本、お館様の命に比べれば遥かに安い。たとえ死んでも、ここは通さねえ。お前ら全員、その首、置いていけ。」
敵たち「ひ・・・・っ」
敵三人がひるんだすきを突き、秀吉は刀を大降りし、受けていた刃をはじき返す。
一閃でなぎ倒され落馬した敵は、土ぼこりに紛れて消えた。
「信長、・・・あの馬鹿はいつもああなのか?」
「ああ、彼奴の捨て身には些か手を焼いておるが、本人はやめる気はないらしい。」
攻撃を受けながらも、馬上の秀吉は、一歩も敵を進ませなかった。
あたりを見回すと、織田勢が敵を圧倒し、手勢の数が逆転している。
「御館様に矢をかけた罪、死しても償いきれないと思え。」
敵2「退け、退けーーーーっ!」
悲鳴を上げ、敵が散り散りに逃走を始める。
「追うぞ、一人たりとも生きて返すな。」
家臣たち「はっ!」
流れる血など目に入らないかのように、秀吉は刀を構え、討って出て---
やがて織田勢は、黒装束の集団を一人残らず拘束した。
「彼奴がおると、俺が刀を振るう暇がないな。」
肩をすくめながら、信長は刀を鞘に納める。
「信長、秀吉のところへ行ってくる。」
「好きにしろ。」
馬の背からどうにか滑り降り、秀吉に駆け寄ろうとしたとき・・・・・