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意のままに

第12章 思惑





「信長様・・・・!」

「きおったか。」
「・・・」

振り向くと、秀吉がUターンして側へと駆けつけていた。

「いったい何をなさっているのです。」
「見てわからんか?まつげを取っていたのだ。」
「・・・・まつげ、ですか・・?」
「ああ、まつげだ。いったい貴様は何事だと勘違いしたのだ。」
ニヤニヤ笑う信長に、なつは内心余計なことをと思う。

「・・・いえ、たいしたことではございません。失礼いたしました。」
苦い顔をして、秀吉は馬を前方へ向けなおす。


「秀吉、貴様にもこのように不器用な面があったとは初めて知ったぞ。」
「何の話か分かりかねます。」
「ほう、そうか。」

信長は心から楽しそうに笑い声を立てている。
お気に入りの遊び道具を見つけた子供みたいに無邪気な笑顔だ。


信長は、上機嫌だな・・・。ひとの気も知らないで・・・

「なあ、秀吉。さっき何を勘違いしたんだ?」
「なんでもない。いーからお前は、しっかり馬にしがみついてなさい」
「・・・」

注意して、秀吉は再び前方へと駆けて行ってしまった。


秀吉の方は、機嫌が悪いな。全く、都合よく捉えてしまいそうだ。

「信長。秀吉は、やきもちを妬いてるのか・・・・」
「貴様、なかなか、さといな。」


「私にか?」
「・・・・は?」
「右腕である秀吉より、私が信長の近くにいるのは、納得いかないんじゃないかと・・・」


そうであってほしいと、でも違ったら嬉しいと対局の想いが胸を占める。
「阿呆。どう見ても逆だろう。」

「逆・・・」


・・・・信長にヤキモチ?秀吉が?


想像すれば、どうしても胸が弾む感覚に陥る。

「っ・・いやいや、それはない。」
「なぜ言い切れる?貴様は、そうだったら良いとは思わんのか?」
「それは、思うが・・・・」
「だろうな。」
「それは困る。」
「困る?貴様は、アレを好いているんだろう。あの柔軟さの足りない、かたくなな男には、貴様のような女が必要なのかもしれん。」
「え・・・・・」


それは・・・どういう意味だ?



言葉の真意を測れず、振り向いて微笑をうかがっていると・・・・

「・・・・・・」
不意に、 信長の顔から笑みが消えた。
冷ややかな瞳が、林の奥をひたと見据える。


いよいよか・・・





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