第12章 思惑
翌日---
なんでこんなことになってるんだ・・・
晴れ渡った空の下、なつは信長と同じ馬で道を掛けていた。
「上体をもう少し、こちらへ倒せ。手綱が扱いづらい。」
「わっ・・」
襟を引っ張られ、身体が反り返る。
振り向くと、なつの後ろで手綱を握る信長様が、にやりと笑った。
「どうだ、乗り心地は?」
「私は1人で馬に乗れるんだが・・・」
「早々に慣れろ。」
1人にする気はないと・・・
満足そうな笑みを見て反論をあきらめ、なつは前方を向いた。
足軽兵の訓練の仕上がりを確かめに向かう途上だ。
信長たっての希望で、なつだけ連れてこられた。
しかも---同じ馬に乗せられている。
兵たちが緊張したり、張り切ったりするのを避けるため、信長は内密に見学するつもりらしく・・今回の視察は抜き打ちで、お供は秀吉をはじめとする十数人のみだ。
秀吉は少し先で馬を走らせながら、心配そうにこっちを見ている。
私が信長に粗相をしてないか心配してるんだろうな・・・
「貴様、さっきから秀吉の方ばかり見ているな?」
「そう見えるか?」
「秀吉も、こちらが気になっているようだな。」
「そうだな・・・。私が信長といることで何をやらかすかが心配なんだろう。」
「・・・俺の見解は、少し違う。」
ん・・?
「なつ、こちらを向け。」
「なんだ?」
後ろに首を向けると、顎を片手で救い上げられた。
「何をする。」
「眼のふちに、まつげがついている。取ってやろう」
まつげ・・・?
至極真面目な顔をした信長様が、なつの瞼のふちに軽く触れる。
「ありがとう・・・・。とれたか?」
「貴様が動くのでうまくとれん。目をつむるがよい。」
「・・・ああ。」
信長が何をしたいのか気付き、呆れながら、目をつむりかけたとき・・・・