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意のままに

第10章 日常~2~







「秀吉、入るぞ。」
「・・・・・え、なつ?」

なつが無遠慮に中へ入ると、秀吉は瞬きを数回した後・・・急に曇りが晴れて日が差したみたいな、明るい笑顔を見せた。

「よく来たな。どうした?・・・と言うか、その着物・・」
「フフ、ようやく仕立てが終わってな、昨日受け取ったんだ。」
見せにきたと、いつものように笑うなつに秀吉は、内心とても焦りを感じた。
「やっぱり、その色合い、お前に似合うな。だが・・・」
「ああ、蜜姫を責めてやるなよ?文句を言われると焦っていたからな。」
「・・・俺が言うのを分かっててそんな形にしたのか?」
「ああ、動きやすいし、私に合っているだろう。」

そう、笑うなつに秀吉は諦めるしかなかった。
「さて、用事も済んだし、早々に帰るとするか。」
「はぁ・・・つれないこといわないで、ゆっくりしていけ。ちょうど暇で困ってたんだ。」


この嘘つきめ。


そう言う秀吉の表情からは、見事なまでに、疲れの色が消えている。

こいつがここまで表情を隠せるとは、知らなかったな。
いや、人のことは言えないが・・・

秀吉がどれほど甘やかしてくれていたか、今更ながら実感する。

「・・・・これ、よかったら。」

なつは持ってきた風呂敷包みを、秀吉に差し出した。

「これは・・・?」
「三成から忙しいと聞いてな、差し入れだ。」

中身は、台所を借りて作った、おもちを細かく切り、揚げたあられだ。砂糖をまぶし、甘い仕上がりにした。

「なつが作ったのか?美味そうだな。」
「レコなら仕事中に小腹がすいたとき、摘まめるだろう?」
「ありがとな。大事に食べる。」

秀吉の手のひらが、当たり前のようになつの頭に乗せられる。
ぽんぽんと軽く触れて、すぐに離れた。

嬉しいが、嬉しくない・・・・。困ったな。
こんな感情、必要ないはずなんだが・・・

内心、苦笑しつつも、この間のような失態は犯さない。
妖艶な笑みを浮かべ心の内を隠す。





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