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意のままに

第9章 日常






なつは天守を出た後、城下へ足を向けた。
秀吉がうるさいので、着崩している着物を直し城下をふらついていれば、怒鳴り声が耳に入ってきた。


店主「どうかお許しを・・・っ。私には何も後ろ暗いところはありません。」
武士1「言い訳は聞かん、戦の迫るこの時期に、よそ者にうろうろされちゃ落ちつかないんだ。」
店主「そんな・・・!あんまりです。」
武士2「なんだと?流しの行商なんぞをやっている、身分の低い根無し草が口答えするな!」

武士の一人が、地に手をついている店主をけり上げようと足を上げる。

「何をしているんですか?」
なつは人垣を縫い、相変わらずの笑みを浮かべながら、店主の前に出る。
店主「っ・・・!お嬢さん、あんた・・・・」
「大丈夫ですか?おケガは?」
武士3「なんだ、お前は・・・。俺たちの邪魔をする気か?」
脅すような低い声を浴び、武士たちを振り返る。

武士4「娘、即刻、立ち去れ。俺たちは戦に備えて安土の町を警備してる最中なんだ。」

「ほう、罵声を浴びせることが警備なのか。」
さげすむような瞳にさらされ、なつは優雅に笑みを浮かべたまま怒りを露わにする。

「警備をするなら怪しい人間を取り締まるんだな。この御仁は商いのためここに来ているんだ。よそ者とか、身分とか、そんなつまらないことで難癖つける暇があるのなら、ここに潜り込んでいる密偵を捕まえてほしいものだ。」
なつは妖艶な笑みで、挑発する。

武士1「なにを生意気な・・・っ」

顔を赤黒くした武士が、握った拳を振り上げる。

それを見たなつは店主を背中にかばい、この時でさえ笑みを消さず、受ける構えを取った。

しかし、受ける直前で目の前に大きな背中が割り込んで武士の拳をはじきかえした。

秀吉「下がれ、お前ら。今すぐにだ」




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