第9章 日常
朝餉を終え、政務に取り掛かろうとすれば声が掛けられた。
「信長。」
「なつか。」
そのやり取りだけで、なつは襖を開け、中へ入ってくる。
「して?」
「はい、昨夜は色々と面倒でしたが抜かりなく。今後、このような騒ぎにならないよう、秀吉には話を付けてあります。」
「彼奴を黙らせたか。流石と言ったところか。」
「恐れ入ります。報告ですが、ほぼ、予想、予定通りです。顕如の居所も突き止められました。」
「何?!フハハ!!流石だな。悧月。」
「恐れ入ります。それから、顕如側で少々妙な動きが。」
「ほう?」
「そちらに関しては、直ぐに光秀側から報告が入ると思います。顕如の居所ですが、報告は必要ですか?」
「いや。必要になった時、貴様が必要だと思う場面で使え。」
「御意。」
「お館様、よろしいですか?」
話し終えたところに、外から声が掛かる。
勿論、小声でやり取りしていた上、足音にも気付いていたなつはいつもの笑みを浮かべ、姿勢を崩した。
それを見た信長も口元に笑みを浮かべ、返答を返した。
「入れ、光秀。」
「失礼致します。・・・なんだ、なついたのか?」
「私がいては不都合か?」
「ああ、そうだな。」
光秀がなつに笑みを返せば、なつは笑みを深め、立ち上がる。
「では、信長。この件は好きにさせてもらう。」
「ああ、大儀であった。」
言葉を交わし、なつは早々に出て行った。
「この件とは?」
「気になるか?」
「クク、深入りはしないで置きましょう。それで、報告ですが・・・」
笑みを消し、光秀が本題に入っていった。