第7章 “仕事”
信長に文を渡した羽黒は、暗闇に紛れ少し離れたところにいたなつの腕に舞い降りた。
「ご苦労様。」
なつは佐助よりも身軽そうな黒い忍び装束に身を包み、羽黒の喉元を撫でてやると、腕から羽黒を空へ飛ばせた。
そして、暫くそこに身を潜めていれば、予定通り秀吉と三成が。
そしてその少し後、顕如の手下たちが信長の元へ向かっていった。
予定では、信長が相手をし、秀吉と三成が締め上げる算段になっている。
手下たちに気付かれないよう、なつは一定の距離を空けその後を追う。
勿論、秀吉たちのいるポイントには細心の注意を払うのも忘れない。
様子を窺えば、手下は全部で4人。
うち3人は、のこのことこちらの罠の中へ忍び込んでいく。
1人は目的の場所からかなり離れ、中の様子を伺っていた。
そのお蔭で、こいつの存在には秀吉も三成も気づいてはいなかった。
ッチ。めんどくさいな。光秀が来ていれば、見逃さなかったかもしれないが。
まあ、あいつが来ると私の存在がばれる可能性があるか・・・
なつはそろりと、外にいる者に近づき、一瞬で気絶させる。
そして、縛り上げて信長たちの通り道に放り、そのまま次の目的地へと向かった。
「秀吉。これもそうか?」
「いえ・・・多分そうだとは思いますが・・・」
その状態に、秀吉も三成も首を傾げる。
「おかしいですね。私たちは家臣を連れてきた覚えもありませんし・・・」
「一応、連れて帰りますが、注意したほうが良さそうですね。」
「クク、問題ない。俺の飼い猫だろう。」
「「?」」
「お館様、飼い猫とは?」
「気にするな。それよりも早々に戻るぞ。」
信長の一言に、他の2人も馬を走らせた。