第1章 トリップ
幸村たちとやり取りをする蜜姫とは対照的になつはあまり会話に参加せず、観察するように眺めていた。
そこへ、佐助が現れ、里へ送ると3人と別れた所で口布を外した。
「良かった、無事だったんだね。」
「えっと・・・?」
「お前は、あの石碑の傍にいたな。」
「あ!そう言えば!!」
「俺は猿飛 佐助。向こうでは・・・」
佐助が、ある程度の説明を終えるとほどなく、追手・・・もとい正宗と秀吉が顔を出したため、佐助はその場から消えてしまった。
4人は安土へと歩を進めるのだった。
少しの時間があり、それぞれ与えられた部屋に荷物を置いたり、着替えを済ませた後、なつは蜜姫の部屋を訪れた。
「いいか?」
「あ、どうぞ。」
「ああ、それともう一人。」
「え?」
首を傾げる蜜姫に、なつは天井を指す。
するとノックが聞こえ、佐助が顔を出した。
「すごいな、俺に気付くなんて。」
そう言いながら、華麗に着地する。
「・・・仕事柄、得意分野だ。」
「そう言えば、なつは何をしてたの?」
蜜姫は自分のことは話したが、聞いていなかったと疑問を口にする。
「普段は学生だった。まぁ、バイト的なことでちょっとな・・・」
言葉を濁すなつに2人は首を傾げながら、佐助は本題に入っていった。
粗方話し終えた時、佐助となつが外の気配に気づく。
「おい。」
「ああ、じゃあまた!」
佐助はそう言うと、サッと窓から消えた。
それと同時に障子が開く。
「逃げ切れなかったらしいな。」
「・・・」
「女性の部屋に入るのに不躾だな。」
「フッ。それは悪かった。」
「そう言う、なつは着物をちゃんと着ようよ。」
「問題ないだろう。きっちり着るのは性に合わない。」
言われたなつはと言うと、帯こそしっかりと締めているが、合せを崩し肩や足が見え隠れしている。
言ってみれば遊女のようなそれだ。
「・・・まあ、いい。信長様がお呼びだ。」
光秀はそう言うと歩きだしてしまった。
それを蜜姫は慌てて追う。
なつはと言うと・・・
「私は部屋に戻ってから行く。」
「場所が分かるのか?」
光秀の言葉になつは妖艶に笑って見せた。
「解らなければ、聞くまでだ。」
そう言って、自身に与えられた部屋へ消えた。