第6章 走り出す運命
「・・・何でこいつは爆笑してるんだ?」
「さあな。俺に分かるはずもない。」
「おい、なつ。取り敢えず、起きろ!!それから着物を直せ!!」
なつは、きっちりと着せようとする秀吉の手を叩き落とし、乱れた合せだけ直す間も笑いは止まらないようだ。
「フフ・・・はー、お腹痛い・・クク。」
瞳に浮かべた涙を拭いながら、座り直し、光秀を見据える。
「光秀、同じことを問うたらどう答える?」
「俺なら・・・」
「それが、答えだ。」
なつは再び妖艶な笑みを作り、光秀の前へ来るとその頬に手を当て瞳を合わせる。
「私の心理と貴方の心理はとても似てる。腹の底を見せないのも、笑みを浮かべる理由もな。」
言うなつの瞳に、光秀は息を呑む。
「待てよ。確かに光秀の奴は、怪しさ満点だが、信頼を得てる。お前とは似て非なるもの。だろ?」
「酷い言いようだな。」
なつの言葉に割ったのは政宗だ。
勿論、政宗自身も一定の信頼を光秀に寄せている。
「そうだな。そういう意味では、別物か。」
光秀から離れ、少し思案するように顔を伏せる。
「だが、貴方たちの質問に答えたところで、解決にはならんだろう?」
「だが、言葉は大切だ。そうだろ?」
「ああ、勿論行動もそうだが、言葉を交わさなけりゃ意思の疎通なんか測れないからな。」
政宗の言葉に秀吉も頷く。
「なるほど。ならば答えよう。答えは否だ。」
「「「?!!」」」
なつが言った答えに、3人は一瞬動揺を見せ、しかし直ぐに殺気立つ。
「私は、貴方たちの味方だと認識しているつもりはない。私に害あるものと認識すれば、いつでも、殺すつもりだ。」
秀吉に至っては刀に手を掛ける寸前だが、なつは鉄扇をいじりながら、気にせず続ける。
「今、味方だと言い切れるのは信長のみだ。」
「「「は?」」」
最後の言葉に、3人は間抜け面を晒す。
「クク、言ったはずだ。答えは光秀と同じだと。分かったら、そろそろ出て行け。」
未だ、呆けてる3人を部屋から追い出し、そのままなつはどこかへ消えてしまった。