第5章 動き出す運命
秀吉は、これで出来た着物に身を包んだなつを想像しながら口を開いた。
「店主これで・・・」
「この反物を包んでくれ。」
「は?仕立てなくていいのか?」
またも、なつは秀吉の言葉を遮る。
「ああ、仕立ては蜜姫に頼むからいい。」
「蜜姫に?」
「蜜姫は針子の仕事に就く予定だったみたいだからな。少し、形を変えて仕立ててもらう予定だ。」
「へえ、それは知らなかったな。」
支払いを済ませ、包んでもらった反物をなつの手に渡る前に受け取る。
「それくらい、持つ。」
「気にするな。」
「・・・ありがとう。」
今まで見せていた妖艶な笑みでなく、可憐と言う言葉が似合う、少し頬を染めて微笑むなつに秀吉は胸が高鳴るのが分かった。
「ぁ・ああ。もう少し、市を見て回るか?」
「そうだな。どこに何があるかは把握しておきたいしな。」
秀吉の言葉に2人は端から端までを時々に店を覗きながら歩き回った。
「結構歩いたな。足は大丈夫か?」
「ああ。」
「そうか、でも歩き回ったしあそこの茶屋で一服してから帰るか。」
「そうだな。」
なつの返答に、秀吉は表の長椅子に座るよう促し、お茶と甘味を頼んでから隣に座った。