第5章 動き出す運命
「秀吉様。」
「ん?」
そこへ、今まで遠巻きに見ていた女たちが集まってきた。
「もう、最近全然顔を見せてくれないじゃないですか!」
「私たち、ずっと待ってるのに!」
わらわらと囲まれる秀吉をよそに、なつは運ばれて来たお茶に手を伸ばす。
「美味いな。」
そう呟けば、秀吉が即座に反応した。
「だろう。ここは安土の中でも一番だ。」
嬉しそうに笑う秀吉に、周りの女たちの視線が一斉になつに向いた。
「ずーっと気になってたんですけど、どちら様?」
「今日は秀吉様とずっと一緒にいましたよね?」
「どういうご関係なの?」
「それに、秀吉様のことを呼び捨てにしてませんでした?」
矢継ぎ早に質問されるが、なつは妖艶な笑みを浮かべる。
「私は「なつは織田家ゆかりの姫君だ。」」
なつの言葉を遮り、秀吉が答えた。
何やら、良からぬことを企んでいるように見えたのだ。
「あら、そうでしたの。」
「フフ、秀吉。私の言葉を遮るとはいい度胸だな?」
「いつもの仕返しだ。」
「「「・・・」」」
2人のやり取りに、集まる女たちは微妙な表情になる。
「お前たちなつは信長様の気に入りだ。仲良くしてやってくれ。」
「ああ、なるほど。」
「信長様から預かってるなら仕方ないわね。」
皆、一様に納得した顔になる。
「よろしく。」
なつはそんな女たちの反応も気にせず、綺麗な笑みで答えた。
「「「・・・(照)」」」
そんななつの笑みを向けられた女たちはあまりの美しさに皆、頬を染めるのだった。
その後、静かになった茶屋でなつと秀吉は甘味を堪能し、城へと戻っていった。