第4章 真実と現実 ~秀吉side~
自室への道のりを進む角を曲がったところで蜜姫とぶつかりそうになる。
「わっ!?」
秀吉に驚き、蜜姫は尻餅をつきそうになるが、それを慌てて腕をとり支え何とか回避した。
「何してるんだ?そんな重いもの。」
よく見れば、なつも一緒で秀吉は眉を潜めるが2人が持っているものを見て更に眉間の皺を濃くした。
「秀吉さん!実は信長様の処に運ぶ所なんです。」
女子が重いものを持ち歩くなんて。
「そうか、なら俺も行こう。」
言いながら、一番重いであろう酒の壺をなつの手から取り上げる。
こんな重いもの、よく1人でここまで持ってきたもんだ。
「残りは2人で分けて持てよ。」
「で・でも・・・」
「秀吉も、信長に用があるのだろう。いいんじゃないか?」
慌てる蜜姫とは対照的になつは悠然と蜜姫の持っていた文の類を受け取る。
こいつは、またか・・・
「なつ、俺のことはこの際どうでもいいが、お館様のことは改めろ。」
きつい口調で言ってみるが、
「断る。大体、信長本人から許しは貰っている。問題ない。」
あっさりとそれを否定しやがった。
「なつって怖いと思わないの?」
俺に気を使ってか、小声で蜜姫は問うが・・・
「それは、信長をか?それとも秀吉をか?」
俺のいる前で堂々と話すなつに
「えっと・・・両方。」
蜜姫は更に小声になっていった。
「クク、怖ければこんな口は利かんと思わないか?」
笑いながら、あっけらかんとした答えが飛ぶのだった。
こんな物言いが、益々疑いを深めると、この女は気付いているだろうに、何故改めないんだ。
秀吉は内心毒づきながらも、天守へと歩調を緩め向かった。