第4章 真実と現実 ~秀吉side~
訪れた転機。
それは、信長宛てに送られてきた品々がもたらした。
全く・・・お館様は何を考えてるんだ。
光秀以上の怪しさを持ったなつに秀吉は警戒心を強める一方だった。
逆に蜜姫は・・・驚くほどに裏表がなく、ついつい構い過ぎないよう自制するのが大変なのだが。
なつに対してはどう接すればいいかも困るところだった。
と言うのも、秀吉が明らかな敵意を向けようがお構いなしに普通に接してくるのだ。
挨拶は勿論、暇だから手伝うことはあるかとさえ聞いてくる。
勿論、蜜姫以上に信用できないなつに仕事など頼めるわけがないのだが。
「あいつはいったい何者なんだ・・・」
書庫で、探し物をしていていた光秀が秀吉の呟きを拾う。
「なんだ、まだなつを疑ってるのか?」
「当り前だろう。お前以上に怪しいやつに警戒心をなくせというほうが無理だ。」
「酷い言いようだな。」
「事実だろう。それで、何か分かったのか?」
「いや、あの2人の情報は1つもない。本当に突然あの場に現れたように・・・な。」
「益々、信用できねえな。」
「お前がそこまでなつを目の敵にするのはそれだけじゃないだろう?」
ニヤニヤと笑う光秀に、秀吉は眉を潜める。
「お館様に言われたんだろう?なつのこと。」
「ああ、放っておけと。だが、疑いが晴れないうちに目を離すのは危険だ。それに、信長様を呼び捨てにするのも・・・」
「それに関しては、お館様が寛容しているんだ。諦めろ。」
光秀は話は終わりだとでも言うように、書庫を後にした。
その姿にため息を吐きながら秀吉も自室へ戻ろうと、書庫を出て歩き始めた。