第16章 衝突
「なつさん、失礼するよ。」
そう言って、天幕に入ってきたのは佐助だ。
「ふふ、佐助はすでに”薬”のことを知っているな?」
「あれ、やはりなつさんが?」
「ああ、実は結核に関する知識もそこそこある。今回の戦分は渡したが、半年以上飲み続けなければ、逆に菌に抗体が出来て効かなくなる可能性がある。」
「なつさんはそれを武器にしようとしてるんだね?」
「それだけじゃないがな。」
笑うなつに佐助は訝しむ。
「今回の戦。上杉・武田の思惑通りだろう?」
「・・・今のところね。」
「顕如は今日、信長たちが泊まる領地を掌握してる。」
「・・・」
「言っておくが、我々織田軍にとっても全て予定通りだ。」
なつの言葉に、佐助は眼を見開く。
「それでな、全てを丸く収めるためにも、佐助。」
「俺は、何をすればいいの?」
「ふふ、静観してくれ。」
「え?」
「これから、起こること全てを静観してくれればいい。それである程度上手く行く。」
自信に満ちたなつの笑顔を佐助は見つめる。
「・・・わかった。」
佐助の返答に、なつは満足そうに微笑む。
「まあ、あとは信玄がどこまで折れてくれるかだな。」
その後も、なつはこの後の展開を何通りも予測を立て開戦に備えた。