第16章 衝突
「信玄様、織田軍はどうやら2分して挟み打ちを狙っているようです。」
「ああ、狙い通りだな。」
信玄たちが軍議を開く中になつの姿もあった。
予定通りだな。さて、私を助けに来るのは三成か光秀か・・・
適役なのは政宗だが。信長はどう駒を動かすのか・・・
織田軍を離れ、今回のことに関して助言はしているが配役を全く知らないなつは思案を過ごす。
「なつさん、大丈夫?」
佐助がそんな姿を見て、小声で話しかける。
「・・・」
「なつさん?」
「ん?ぇえ。大丈夫。ちょっと考え事をしていただけ。」
「やっぱり心配だよね。」
「いや、あっちの心配はしてないよ。」
「え?」
「ふふ、佐助。後でこっそり会いに来い。」
怪しく嗤うなつに佐助は首を傾げながらも頷いた。
「やあ、気分はどうだい。」
そこへ、話を終えた信玄たちも集まる。
「ふん、こんな女などいなくてもどうとでもなっただろう。」
謙信がつまらなさそうに言う。
「信長様はこちらに向かってないんですね。」
「おや、不服かい?」
「いえ・・・」
予定通りだ。
なつは内心怪しく笑う。
「多分、明日の朝には開戦になるだろうな。」
「信玄様、こちらには誰が?」
「そこまでは分からん。だが、信長には石田三成と明智光秀がついているようだ。」
そうなると、政宗か。ふふ。適役が来るな。これは私も楽しめそうだ。
「私の役目ももう終わりですね。」
「ふん、いや・・・顕如が失敗することを祈っていろ。」
「謙信様、戦いたいからってそれは言っちゃだめですよ。」
「・・・ふふ。」
佐助と謙信のやり取りに思わず、なつは笑みを零す。
「お前、何笑ってんだよ。」
「ふふ、失礼。信長様は負けませんよ。」
「なつさん、余裕だね。」
「だって、一緒にいるのは、知略に長ける武将が2人。不意打ちにも強いですよ。」
「それも良かろう。ここまで来れば、この俺がまとめて相手をしてやる。」
そう言うと、謙信は身を翻した。
「信じているところ、悪いが、多分、あいつらはここまでだ。」
「どういうことですか?」
「いや・・・何でもない。」
そんな言葉を残し、幸村も信玄もその場を離れていった。