第13章 思惑2
翌朝、なつは予定通り、秀吉の御殿を訪れていた。
「なつ?どうした?と言うか、1人で来たのか?!」
「ああ、だが、人通りの多い道を選んできている。」
「だからってな・・・」
「うるさい。貴方に指図される筋合いはない。」
「いや、ある。お前は俺の・・・」
「妹だ?そんなに心配しなくても、信長の気に入りは、蜜姫だ。私には害はない。」
「だが、万が一と言うこともある。」
「はぁ・・・まあ、気を付ける。」
「そうしてくれ。そう言えば、何しに来たんだ?」
「ん?・・・あぁ、これを。」
そう言って、なつは着物を差し出した。
「着物?」
「ああ、最近世話になってた礼と、単純に似合いそうな色合いだったというのもある。」
「・・・ありがとな。大切にさせてもらう。」
「大切にするのはいいが・・・一度も袖を通さないというのは止めろよ。」
「え・・・」
「今度の戦。必ず、生きて帰ってこい。」
「・・・前にも話したはずだ。俺は・・・」
「馬鹿が。」
「なっ!」
「お前の覚悟とやら、あまりに安すぎて反吐が出る。」
「どういう意味だ。」
笑みを消し、吐き捨てるように言うなつに、秀吉は苛立ちを見せる。
「昨日のお前の戦い方。」
「俺の命は信長様の物だ。お館様の為なら、喜んで・」
「それが、安い覚悟だと言ってるんだ。」
「っ!!」
「いいか?主従関係において、命が主の物であるのは常だ。だが、その命は決して軽いものではない。自身を守り、尚且つ、主を守る覚悟がなければ、いずれ、両者が命を落とすだろうな。」
「そんなのは、綺麗事だ。お館様がいなければ、天下統一は成しえない!」
「・・・本当に、そう思うか?」
秀吉の言葉になつは悲しそうな笑みを見せる。