第13章 思惑2
「なつ、いるー?」
「蜜姫?どうかしたか?」
夕餉を食べ終え、明日からの段取りを考えていれば蜜姫がなつの部屋を訪れた。
「頼まれてたもの、持ってきたよ。」
そう言って、蜜姫が着物を差し出した。
「ああ、早かったな。」
「そりゃ、基本の形だし。なつの着物と違って楽だよ。」
苦笑する蜜姫になつも笑う。
「もし、直すところとか、必要だったらまた言ってね。」
「ああ、すまんな。」
「そう言えば、今日、軍議に出てなかったけど・・・どうかしたの?」
「ん?ああ、まあ色々とな。それより蜜姫、くれぐれも城下へは下りるなよ。」
「え?」
「お前が、信長の気に入りだと知れれば・・・道具にされるぞ。」
「似たようなことを、光秀さんにも言われたよ。」
「フフ、まあ、大戦前だ。とにかく城から出るなよ。出るときは、必ず、秀吉や光秀辺りに相談しろ。」
「うん、あ、なつも気を付けてね。」
「ああ。」
蜜姫が部屋から出て行った後、なつは今届けられた着物を眺める。
「・・・明日の朝一番に渡しに行って、そのまま・・・」
これからのことを、想像するなつの口元は嘲笑うかのような笑みが湛えられていた。