第13章 思惑2
秀吉の言葉になつは悲しそうな笑みを見せる。
「・・・」
「己が死んだ後で、それが原因で主が命を落としたら?と考えたことはあるか?」
「!?」
「己が死んでも、主が生きていれば・・・のほうがよっぽど綺麗事だ。残された者の気持ちなど、知る必要も、その先を考える必要もないからな。」
「俺は!!」
「秀吉。私が、腹立たしいと言ったのはそう言うことだ。私なら・・・貴方ほどの力があるなら、迷わず、どちらも生きる道を選ぶ。主の為なら、命も惜しくはないとは、絶対言わない。生きて、隣で目標の先を一緒に見ることを選ぶ。たとえ、庇い怪我を負おうと生きることを諦めはしない。」
「・・・だが。」
「まあ、考え方は人それぞれ。私の言葉が綺麗事だと言うなら・・・もう、私は口を出さん。」
綺麗に笑い、秀吉を真っすぐに見つめ、秀吉の頬に手を伸ばした。
「だが、死ぬことで、悲しむ人間がいるのを忘れるな。」
「・・・馬鹿を言うな。俺の帰りを待つことはないし、俺がもし、帰らなくても、お前は幸せになるべきだ。」
なつの痛々しい笑顔に、秀吉はなつの手に己の手を重ねる。
「本当に、大馬鹿。帰りを待たないなんて出来ないし、無事を祈るのは当然だろう。」
「駄目だ。お前が幸せになってくれないと、俺が困る。」
愛してしまった女が、せめて自分の傍にいなくても幸せにな
ることを願うのは当然だろう?
口に出せない思いを秀吉は、精一杯想いを込める。
「・・・私の幸せは、秀吉、貴方が隣にいることだ。」
「っ!!俺がいなくても・・・」
「無理だな。私は・・っん!!」
言わせてはいけない言葉を遮るように、秀吉はなつの唇に己の唇を重ねた。