第13章 思惑2
「信長様、失礼致します。」
「光秀、入れ。」
断りを入れ、光秀が入室すると中には狐の面をつけた隠密の姿があった。
「信長様、そちらは?」
「悧月と申します。久兵衛殿に書状をお渡し致しましたが、無事、手元に渡り幸いです。」
「お前が・・・」
「悧月は最近雇ったものでな。どこにも属さんが、腕は確かだ。」
「では、あの居場所についても・・・」
「無論、この目で見て確認もしております。ただ、迂闊に近づけるような警備体制ではありません。この城よりも忍び込みづらいと考えても過言ではないでしょう。」
「なるほど。しかし、いつから居所を?」
「・・・」
「フン、知らんほうが身のためだ。」
「ほう・・・それはかなり前から分かっていた。と。」
「例の湯治の件では既に。」
「何故、早々に申し出なかった?」
光秀の眼光が鋭く、悧月に突き刺さる。
「わたしくしは、あくまで信長様の命にのみ従い動いております。信長様が明智様の動きを把握さなっていることも、承知の上。しかし、七里の発言により、少々問題が発生した為、今回の手段を取らせていただきました。」
「光秀、こやつは優秀だが、頼り切れば、内情が乱れる。」
「つまり、俺が探り当てるのが最善だった。と言うわけですね。」
「ああ、それから、こやつのことはくれぐれも口外するな。」
「御意。」
疑問を解消し、光秀が去った後。
「信長様。」
「どうした?」
「城下で、武田の隠密がなつを攫おうと動いています。」
「ほう・・・?」
「探りを入れましたところ、どうやら顕如は今、武田信玄と動いている模様。そこで・・・」
「捕まり、奴らの動きを間近で探るか?」
「御意。」
「それについて・・・その後の織田軍の動き方に進言を・・・」