第5章 破滅【帰】
アイSide
ロヴォフ「か………な…っ…い…っ」
突然身体に異常が現れ頭が混乱する中
言葉も発する事が出来ず、更に恐怖に陥っていくロヴォフ
『あーあ。駄目じゃない、高価なお酒は少しずつ舌で味わって飲まないと』
ロヴォフ「っ!?」
心底驚いた表情で見つめるロヴォフは、声を出す事も出来ずに私の前で無様な姿を晒している
『一口ずつ飲んでいれば、今頃私に文句の一つでも言えたかもしれないのに…ね?』
ロヴォフ「…っ!!」
『あぁ、そっか。声が出せないんでしたね?大丈夫、死にはしない…身体の麻痺も明日には消えてるわ』
『調査兵団のエルヴィン・スミスはご存知ですよね?初めまして。私はエルヴィンの娘…同じく調査兵団の愛・スミスです』
私の正体を知り驚いて目を見開くロヴォフだったが、上を向いたままこちらを向く事はない
『…もうお気づきですよね?私が何の為に此処にいて、何故アナタがそんな所で寝そべっているのかも……』
出会ってから今までの全てが、必然であった事を告げるとロヴォフの身体は僅かに震えだした
ロヴォフ「…………っ」
流石に巨人用の薬を一気に体内に入れた所為で、全身の麻痺が酷く
更には段々と症状は悪化し、視線を動かす事もままならないと言った様子だった
そんな中…ジャケット、スラックス…と
一枚一枚を丁寧に剥ぎ取りながら書類や鍵がないかを確認していく
『ホント…だらしない身体…』
時折、よく肥えたその身体に悪態をつきながら
『…ん?』
そして、とうとう上下共に肌着一枚にした所で首元のネックレスが視界に映る
私の手が体中を弄ろうともピクリともせず、ただ豪華な天井だけを見つめ続けていた
ロヴォフ「っ!!』
肌着で隠れていたネックレスを取り出すと、硬貨程の小さな鍵がそれに通してある
『ふふ、分かりやすい男…』
目がしっかりそれだと訴えるロヴォフを見て、書類は鉄の箱の中だと確信した
私は迷わず鍵穴にそれを差し込む
『今の気分はどう…?』
鉄の箱を開けた今の私の気分は
最高に気持ちが良い…