第5章 破滅【帰】
アイSide
『私の手にこれが渡ってしまった以上、アナタがすべき事は一つ』
手に入れた書類には憲兵団と商取り引きをする、ラング商会との癒着の証拠がしっかりと記されていた
これ一枚でロヴォフを失脚させるには充分な証拠と言えるだろう
ロヴォフ「っ………」
相変わらず喋れないはしないが、構わず私は手に入れた書類をこの男の顔の前に突き付け
言い聞かせる
『壁外調査を議会で承認しなさい。これはお願いではなく"命令"よ…?』
『もしこれに反する事があったなら…どうなるか、悪知恵の働くアナタなら分かるでしょう…?』
ロヴォフ「お……っ…れ………や…る…っ!」
私へ向けられた刺す様な視線と、麻痺した舌で絞り出した声
"お前をいずれ始末してやる"と…そう聞こえた様な気がしたのは、あながち間違ってはいないだろう
『…くれぐれも、選択を間違えないように』
冷たく見下ろし、より低い声でそう言うと
私はロヴォフに背を向け、綺麗に編み込まれた髪を一気に解いた
そして窓を開ければ、真冬の風が私の長い髪を靡かせる
そんな冷たい風も、全てをやり遂げた今の私にはとても心地がいい
『さよなら』
一言そう言い残し、私は開け放たれた二階の窓から飛び降りる
最後に見たロヴォフの姿は
やっぱり私の目には無様に映った