第5章 破滅【帰】
アイSide
部屋へ戻ると、そこにロヴォフの姿はなかった
『あの、ロヴォフ様はどちらへ?』
仕様人に尋ねるとまだ入浴中だと聞かされる
やっとその時が訪れようとしている
『何か飲み物を頂けるかしら?』
「勿論です。何をお持ちしましょう?」
『…じゃあ、ロヴォフ様がお好きなお酒を』
「かしこまりました」
そうして仕様人が持って来たのはワインと二つのグラス
『ありがとう』
仕様人が部屋を出て行ったのを確認すると、急いで作業に取り掛かる
この窮屈な生活にやっと終わりが見えてきた
ワインのコルクに注射針を刺して、中に液体を流し込む
ハンジに譲ってもらった薬で、巨人には全く効果が見られなかった粗悪品らしいが
人間に使用すれば、全く身動きが出来なくなる程身体に強い麻痺症状が表れるとか
あの男がこのワインを一口でも飲めば、全てが終わる
私のこの窮屈な生活も、あの男の欲に塗れた生活も…
そう思うと、口元が緩むのをどうしても抑えきれない
ロヴォフ「少し待たせてしまった様だな」
丁度ロヴォフが入浴を済ませ戻って来ると、私は恥じらう淑女を演じる
『ロヴォフ様!あの…いかがでしょう…?』
ロヴォフ「あぁ…私好みのイイ女に仕上がっている。とても美しく魅力的だ」
『ロっ、ロヴォフ様…!?』
この男はよほど余裕がないのか、思いっきり私の腰を抱いて引き寄せる
近くで感じる荒い息遣いや、いやらしく背中を撫でられる感覚に寒気がした
今すぐ蹴り飛ばしてやりたい