第1章 真っ白
「いたた……」
まさかボールが自分に直撃するとは微塵も思ってなかったあやめは、当たった衝撃でバランスを崩し、硬いコンクリートの上に尻餅をついていた。
ボールが当たった左肩が少し痛む。
暫く動かないでいると、バタバタと足音が近づいてくる。
やばいと思いつつも、尻餅をついてしまった為すぐに立ち上がる事が出来ないあやめは、カラフルな彼らと対面する。
「あ……」
「…………」
赤い彼と目が合った。
それはまるで時が止まったかのように。
目をそらす事も出来ず、声を紡ぐ事も出来ず、ただただ見つめ合う。
世界にはお互いしか居ない。
そんな錯覚さえしてしまう。
「……大丈夫ですか?」
時が止まっていたのは、ほんの刹那だったようで。
気付けば赤い彼が手を伸ばしてくれていた。
「あ、はい。ありがとう、ございます」
その手を握り、立ち上がれば皆の視線が痛い。
何度か瞬きを繰り返し、困ったように笑えば皆の頬に朱が差した。