第1章 真っ白
体育館が近づくにつれ、音が聴こえてくる。
それはあやめにとってあまり馴染みのない音で、一体何をやっているのか分からなかった。
正面の扉は閉ざされていて、そこを開けて覗くほど肝は座っていない。
何処か開いている所はあるだろうかと見回せば、ピピーッと笛の音がした。
耳を澄まして聞けば、どうやら休憩らしい。
ガラガラと音を立てて、正面では無く体育館の左右にある扉が開いた。
途端に生徒がわらわらと出て来る。
「わわっ……」
見つかってはまずいと思い、あやめは陰に隠れた。
かなりの人数が出て行くのを確認し、あやめはそぉっと開いた扉に近づく。
数人の話し声が聴こえる。
急に覗いたらバレるだろうか。
いやしかし、ここまで来て引き返すのも惜しい気がする。
あやめはあれこれ思案するが、身体は正直なようで何の気なしにひょこっと覗いた。
「わ……」
中は広く、そして熱気があった。
汗と、体育館に染み付いた臭い。
少し鼻につくが、嫌いでは無い。
「紫原ぁ、1on1やろーぜ!」
「えぇ〜めんどくさいからパス」
「じゃあ緑間」
「嫌なのだよ。今は休憩中だ」
「だって暇なんだよ!赤司、相手してくれ」
「俺もパスだ。悪いな青峰」