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【S×A】だから人生は素晴らしい

第3章 First Love





「今みたいに伝えたら、きっとわかって貰えるよ」





優しくて甘い笑顔

じわりと涙が滲んでくる



「俺じゃなくってもさ」






もしかしたらマサキさんは、
何もかもが中途半端な私に気付いていたのかも知れない


見た目だけ変わっても、意味なんかないんだって


誰かにすがりたくて告白したんだって


だけど…伝わらないかな


それだけじゃないんだって


マサキさんに惹かれてるのは、紛れもない真実だから




「……付き合ってる人いないって……言ってたよね」

「うん?」

「私が…もっといい女になったら…」




涙が零れてしまいそうに、鼻の奥がツンとして……


一呼吸して我慢した






「付き合ってくれる?」

「いいよ」




ふふっと相変わらず優しい顔は、

本音はどうかなんてわからないけど……

可能性があるんだって信じたい





「約束だからね」










観覧車が地上に到着する

マサキさんと繋がったままの左手に、

もいちど力を込めて、外に出た





頬を撫でる冷たい空気が心地いい




澄んだ青い空は、

オレンジを帯びて



楽しい時間のタイムリミットを知らせてる









騒がしい雑踏の中
駅の直ぐ側で、足を止めた



私に引っ張られるような形で、立ち止まったマサキさんが、


どうしたのって、私を見つめる





「ここで、いい。

ありがとう」

「え……いいの?」






そっと放した手のひらは
優しい温もりが残ったままだ





「またね」





せいいっぱいの言葉


出会ったばかりの私との些細な約束を


マサキさんの記憶に残るのかさえ、定かじゃないけど





はっきりと縁取られた気持ちが、


私をほんの少し強くする









マサキさんは、

大好きなキラキラの笑顔で

“バイバイ”って、手を振ってくれた



私も、思いきり笑ってみた



少しでも記憶に留まるように……









小さくなってく後ろ姿を


見えなくなるまで見つめてた








私の初恋は、終わりなんかじゃない



これから、始まる



だから、泣いたりなんかしない





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