第3章 First Love
私、恥ずかしすぎる
何ひとりで盛り上がってんの!?
バカみたい、バカみたい
「キスしたかったの?」
からかうみたいなセリフに、
何だかすごく虚しい気持ちになる
「そんな簡単にダメだよ?
俺みたいなヤツにさ~」
確かに軽率かも知れないけど
だって私
ぎゅっと、スカートを手繰り寄せた両手を見つめてた
「好きな人とやんなきゃ」
優しい声だけど
私にとってその台詞は、すごく残酷で
絞り出すように、言葉を紡ぐ
「私、マサキさんが好きだよ。
…きっとこれから、もっと好きになるよ」
顔を上げて見たマサキさんは、ポカンとあからさまに驚いた顔をしていて
だけど、すぐに
くしゃっと目尻に皺を寄せて、優しい顔になる
「……ありがとね」
“ありがとね”は、受け入れたんじゃなくて
今の距離までだって、線引きされた気がした
私がまだ高校生だから?
出会って間もないから?
お互いなんにも知らないから?
「私のこと嫌い?」
「え?そんなわけないじゃん」
「じゃあ」
「好きだよ」
「っ…その好きじゃなくって!」
あまりにもサラッと口にして
私の好きとは違うんだって思い知らされる
「好きに種類なんかあんの?」
「あるよ」
「ふーん」
近くなる景色を見ながら、マサキさんの言葉は意味ありげに響く
「私、こんな風に誰かを知りたいって思ったの初めてだから」
必死に訴える言葉は震えてて
「私の事、マサキさんならわかってくれる気がして」
そう言いながら、なに言ってんの、って自分でもわからない
ただ、あまりにも反応がないから焦ってしまう
観覧車が地上に降りれば、
次の約束なんて、簡単に交わされそうな気がしたから
「そんなさ…泣きそうな顔しないの。
俺、女の子に泣かれたらどうしていいか、わかんなくなっちゃうんだよね」
伝わらないならせめて
困っちゃえばいい
こんなことでしか、私はマサキさんに気に掛けて貰えない
「あのさ
わかって欲しいなら、ちゃんと伝えたの?」
「え…」
「今みたいに、素直にさ…」
ざわつき出す鼓動は、
後ろめたさが見え隠れする
金髪にしたのが、その証拠だった