第10章 運命の日まで #オマケ
「えへへ。
なんか照れちゃうね」
久しぶりの空間は
あえてそうしてくれたのか、殆ど変わってなかった
一緒に揃えた家具や食器もそのまま
だけど、見覚えのない書籍やパソコン
以前のアイツには縁のなかったもので
ハンガーに掛けられたスーツも不思議で仕方ない
ネクタイを外し、腕まくりして
早速作ってくれたオムレツが俺の前に出される
綺麗な黄色いオムレツには
ケチャップで“おかえり”と書かれていた。
「いただきます」
ひとくち含んだ途端に広がる優しい味は、マサキそのもの
やべ…胸いっぱいで、込み上げる感覚に自分で戸惑う
「…っ、なんだよ。
お前は食わねぇの」
「俺は大丈夫。牛丼食べてきたから」
にこにこ笑いながら、食ってる俺から目を離さない
「……しょーちゃん、
おいし?」
「ああ」
「よかったぁ」
くしゃっと顔を緩ませ、目尻に出来た皺
あまりの愛しさに心臓を掴まれる
じわじわと深まる感情は底を知らない
そして
ズクンと湧き上がる感情は下心
ガッついてんのを悟られたくなくて、
オムレツに集中すると、喉に詰まらせて噎せた
「もー!何してんの!
大丈夫?」
くすくす笑いながら、背中を摩ってくれる
触れた掌から伝わる温度と感触
汗に混じったマサキの匂い
「……もう限界だわ」
腕を掴み、そのままラグに押し倒すと
驚いたマサキが、一瞬目を見開いて
だけど、応えるように瞼を伏せた
甘くて
深いキス
いくらしたって足りなくて
何度も何度も角度を変えて貪り合う
途切れたキスの合間に、蕩けた瞳で俺を見上げ微笑む
「ねぇ、どうしてあそこで、今日会えるってわかったの?
俺、すげぇ久しぶりに来たんだよ」
なんでこのタイミングなんだよ
今日までの数日を知ったら一気に萎えるだろお前
返答に困って考え込んでると
自分で聞いといてマサキが答えた
「きっと、運命だよね」
そうだよ。
運命なんて奇跡だけじゃ起こらない
努力が必要なんだ
簡単にすべてを手に入っちゃ、そんな人生つまんねぇよ
“だから、
人生は素晴らしい”
オマケ「運命の日まで」おしまい