第3章 First Love
ビルに隣接した赤い観覧車は、
ショッピングフロアから乗れるようになっていて
出来た当初、友達とワイワイ言いながら乗った事はあったけど
こんな、男の人とふたりきりでなんて…ない
初めてだよ
ただでさえ緊張して、ぎこちなく繋いだ手が汗ばんでしまいそうで
顔だって、変に赤くなってないか……すごく心配になる
チケットを2枚買って、
係の人に誘導されながら、数人の列に並ぶ
みんな、カップルで
私達も同じように見えるのかなって思ったら嬉しくて
「気をつけてね。段差あるから」
気遣う優しい素振りと
女の子扱いしてくれるくすぐったさに
ますます気持ちは高揚してく
やってきた観覧車
向かい合わせに座ろうとした私に
「こっちでしょ」
ぐいっと手を引き寄せて、隣りに座らす
「せっかく女の子と乗ってんのに、もったいないじゃん」
“ね?”って、顔を覗き込んで
甘い甘い笑顔が、頑なな心を溶かす
「うわ~、見てよ。
すっげー高い〜」
子どもみたいにはしゃいで、真下に広がる景色に声を上げる
軽いし、遊んでそうなのに……
人懐っこい笑顔とあったかい雰囲気が、いいなぁ…好きだなって
どんどん惹かれてくのに気付く
マサキさんと会うのは、まだ3回目だよ
もっと知りたいって、
マサキさんの特別になりたいって、思ってる
ゆっくりと高くなる観覧車
一番高い位置になった時
マサキさんと視線がぶつかった
不意に過る邪な予感に、心臓が跳ねる
無邪気な瞳なんかじゃない、大人な顔のマサキさんだ
これって……今って……
そのタイミングだよね
ぎゅっと繋いだ手を握り返して
少しだけ顔を上げて、
目蓋をぎゅっと瞑ってみる
肩に手が置かれたのがわかって……
くる…って、覚悟したのに
近付いてくる気配が……なくて
そおっと…目蓋を開くと
そこには、ふふっと笑う、からかうみたいな表情のマサキさんがいた
「な…っ///」
かぁーっと、全身から汗が吹き出しそうで
恥ずかしさでマサキさんに背を向ける
「も~、こっち向いてよ」
見れるわけないじゃんって、首を横に大きく振った