第3章 First Love
応急処置だからね、って
寄り目で針に糸を通して
その人は、私の隣にぺたんと座った
「ちょっと動かないでね」
自分の着てたジャケットを、躊躇なく脱いで
私のスカートを隠すように掛けてくれた
「ちょっと、寒いでしょ!?」
「ヘーキ!
俺、男の子だから」
薄手の長Tだけなのに、
こんな真冬に平気なわけない
だけど…
右斜め下、
見下ろした視線の先
真剣な顔をしてるその人が
よく見ると
スゴくカッコイイことに気付く
あんまり、顔見てなかったから……
派手な髪色ばかりに目がいっちゃってて
「ちょっと、待っててね。
ゴメンね」
変なの
どうして謝るの?
だって、何にもしてないでしょ?
それに、
よくよく考えたら、
上着で隠して、スカート前に回したら
自分で私、縫えたんじゃない?
「出来たっ!」
口に咥えた糸を、
歯で切り、満面の笑顔でそう叫んだ
「ありがとう」
「どーいたしまして」
借りてたジャケットを渡すと
直ぐに羽織り、両手を擦った
吐いた息は白くって、いかにも寒そう
ちょっと、だなんて
たぶん30分は経ってる
「じゃ、俺行くね?」
「あのっ!お礼っ
連絡先っ」
ひゃっひゃと笑いながら、
連絡先ないから、と首を振る
「でもっ…」
「お礼なら、ちゃんと貰ったから!メロンパン!」
ニコニコと笑いながら手を振って、その人はいなくなった