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【S×A】だから人生は素晴らしい

第2章 意味ない生活






「ただいま」




いつもなら、飼い犬みたいに玄関先で迎えてくれるヤツが


インターホンにも、オレの声にも反応がなくって


不思議に思いながら、リビングのドアを開けた





「マサキ…?」





明かりはついてるし

気配も……ある……




「…って、おい……」




部屋をぐるりと見渡すと


ソファーの影になって……
ローテーブルに突っ伏したヤツは、


それはそれは気持ち良さそうに眠ってて……



思わずしゃがみこんで、
ヤツの寝顔をまじまじと見つめた




「ガキみてー」




そう言えばコイツ、いくつだ?


歳もだけど……生まれも育ちも……


趣味も好きなもんも、何も知らないな……


鼻をぎゅっと摘まむと
苦しそうに眉間にシワを寄せたから……自然と笑みが零れた





「ん…っ、しょーちゃ…ん?」

「ただいま」





不思議と安心出来る人懐こい笑顔と鼻に掛かった声で




「おかえり」




真っ直ぐに俺を見つめた


気まぐれと勢いだけだと思った関係が
それだけじゃないと、日に日に実感してる






だけどそれは

決して表に出してはいけない

俺はお前が男だから家に置いてやってる



これ以上の進展なんて、社会的にも常識的にも

絶対ないからだ




「なぁ?今日のメシなに?」




テーブルの横に置いたスーパーの袋からは、長ネギが覗いてる



「今日はねぇ
麻婆豆腐作ろうかなぁって!」

「凄いじゃん。そんなん作れるの?」

「前にね、中華やさんでバイトしてたの」

「へぇ」





ジャケットを脱ぐ俺の傍らで


やっと起き上がったヤツは
ごそごそと夕飯の準備を始めた




「ニンニク入れちゃうけど、大丈夫?」


「え?ああ」




好き嫌いはないと答えかけた俺に

意味不明なことを言ってきて……




「ニオイとか気になんないよね。
良かったぁ、俺もそう。
やっぱりどっちかだけだと気にしちゃうよね」




俺の深読みなのか

元々意味なんてないのか





「とりあえず、先にお風呂入って来なよ?

ね?」



下手くそなウインクに見送られ、全身が粟立つ




だけど、それさえ意味があったのかなって、


そう思ってしまう俺は
もう、引き返せないのかも知れない



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