第2章 意味ない生活
部屋の前で、上着から鍵を取り出した瞬間
ヤツがいることを思い出して、
インターホンを押した
『ハーイハイハイ…』
能天気なヤツの声が響いて、
大きくドアが開く
もはや、なんとも思わなくなった
輪ゴムで纏めた前髪も
開けた瞬間に感じる、不安な匂いにも
「お帰り!
お風呂にするぅ?ご飯にするぅ?
それともぉ?」
「…ナンだよ(笑)」
「しょーちゃんのエッチ!」
「なんでだよ!」
リビングに向かう廊下でも、やたらテンション高くって
コイツのこーゆー所って不思議だな
普通なら、イラつくはずなのに
いろんな柵を忘れられる
テーブルに並べられた料理に思わず苦笑い
「お前さ?
他にレパートリーないわけ?」
「え、だってさ?
冷蔵庫、卵くらいしかないじゃん」
「あ…そか」
コイツが金持ってるわけないし……
家事させといて、食材費くらい渡しとくべきだったよな……
「悪ぃ…ってか
今日、昼飯どうした?」
財布から取り出した一万円札を、マサキに渡す
「今日はねぇ
女子高生にメロンパン貰ってー」
「はぁ?」
「パンツまで見せて貰っちゃった(笑)」
「ちょっ、お前……犯罪は犯すなよ?」
「(笑)」
オイオイ…ホントにこいつ、大丈夫かよ?
手にした一万円を、
“しっかりやりくりするね”、どこまで本気かわかんねぇ
「ねぇねぇ♡
なんかさ?結婚生活みたい?
うーん…、同棲生活?」
「ちげーよ。
お前は居候なの。ただの同居」
そもそも俺らの関係を
どう説明したらいいんだろう
勢いでヤっただけだ
もちろん恋人でもなけりゃ、友達でもない
限り無く他人に近い
ただの“同居人”だ