第1章 Look at the skies
「しょーちゃん、俺
風呂入ってくるね」
「おう」
当たり前にバスルームへ向かうヤツの背中を見送って……
途中で手を止めたパソコンに視線を戻す
ヤツがなんとなーく、
ウチで過ごすようになって……早くも一週間が過ぎた
そろそろ、大丈夫かな
アイツはやっぱり、バカでいいかげんだけど
それで人を脅そうとか、大金手に入れようとか、
危険な考えはないようだ
10代のガキみたいな考えしか、持ち合わせてない
これ以上一緒にいて、
変に懐かれても困る
アイツが風呂から出たら、
明日の朝には、
出てって貰うように話そう
後腐れなく、嫌味にならないよう
とりあえずは、親が来るかも知れないとか適当な理由つけてさ
そう考えてた時
鳴り出した電話に、
一気に憂鬱な気持ちが押し寄せる
「もしもし。
うん、わかってるよ。
え……?」
親の薦める相手とお見合い
ある程度の父親を持つジュニアなら、そう珍しい話でもない
親の為、会社の利益の為に、
結婚する事だって、充分有り得る
そういう運命なんだって、諦めてるし、受け入れてるつもりだよ
だからって、
「ちょっ、とりあえずはお見合いしてって話だろ?
籍ってなんだよ?式の話も聞いてない!」
"相手方のお嬢さんが乗り気でな……"
俺が何を言ったって、
親父が聞き入れてくれない事はよくわかってる
だけど……
"お前もいい年齢だ。
先方のお嬢さんの気が変わらないうちに……"
顔も知らない未来の花嫁は
親父の会社の大事な取引先の一人娘
その彼女が、親に着いて会社に訪れた時、俺に一目惚れしたらしい
最初はまだ若いから、一時の熱病みたいなものだろうと
真面目に聞き入れなかった両親も
彼女が大学を卒業すると同時に、結婚したいと言い出し
可愛いひとり娘の我が儘も、会社の為にもなるなら尚更
叶えたくなるのだろう
ソファーに身体を預けたまま
ぼんやりと、暗いままのテレビを眺めてると
カチャリ、とドアが開いて
ヤツがリビングに入って来た
いつもなら、明るく話し掛けてくんのに
空気を察してか、黙ったままだ
俺のが気になって、
ゆっくり振り返った