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【S×A】だから人生は素晴らしい

第10章 運命の日まで #オマケ







小さなボストンバッグ片手に

懐かしい街並みを歩く

どの光景を切り取っても、鮮明に蘇る記憶





「さっぶ…」




両手を擦り合わせて、吐いた息は真っ白で

あの日もこんな風に寒かったなって、この温度さえ愛しく思う




今日、出会えるなんてなんの保証もない

奇跡を信じて待ってるだけ




なのに、確信に近いこの感情は何だろうな




病室でアイツを拒絶したのは一年以上前

最後に見た顔は、泣いて……絶望に満ちた、痛々しい表情だった




仕方なかったとしても、あんな顔をさせた事は後悔してる



久しぶりの再会

どれだけ待ち望んでいたか

きっとアイツなら、この場所に来てくれる。







空の色も空気も

ほら、あの日とよく似てるじゃないか



予定通りの時間に商店街を歩くと

人通りの疎らな歩道で足を止めた




ここなら、店を出て駅まで続く一本道だし確実に会える




会える




柄にもなく興奮を抑えるのに必死で、
何度も何度もその瞬間のシチュエーションを頭で繰り返した





会える






会える……よな……






悴んで感覚のなくなった掌に必死で息を吹き掛ける





すっかり暗くなった空


あの日と……同じ……ん?








「嘘だろ…」





いつの間にか雲に隠れた月

肌に感じる冷たい感触

突然降り出した雨に、慌ててパーカーを被る








あと少し


もう少しだけ……!



だけど、雨脚の激しくなった雨は

目を開けられない程で

俺は仕方なくその場を後にした








くっそ!出直しだ



まだ俺に試練を与えるか!!?上等じゃねーか!!!








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