第9章 だから人生は素晴らしい
「おにーさん、
ね~?今帰るとこ?
俺も一緒に連れて帰ってくんない?」
今、俺が見てるのは幻?
夢……なの?
「俺、ショウ。
おにーさんの名前は?」
道端にしゃがみ込んで、俺を見上げる大きな瞳
なんで、こんな急に現れんの……
いつかその時が来たら会えるって信じてたよ
俺がもっと頑張って
そしたら会いに行こうって
迎えに行こうって
だって、あの時のセリフはそういう意味だったんでしょう?
“お互い知らなかった頃に戻ろう”
もう一度、出会おうって
そうなんだよね?
「マサキ」
久しぶりに聞いた
そう呼んでくれる、愛しい声
「……忘れちゃったんじゃなかったの……?」
声が震えてる。なんて言ったらいいのかわからない。
この日を夢見て
ずっと信じてきたのに
頭ん中が真っ白だ
「忘れたよ。
お前のこと以外、全部」
優しく微笑んだしょーちゃんの顔が
まるで写鏡みたいに、くしゃっと崩れた
きっと俺もおんなじ顔してる
「しょーちゃ…っ、
会いたかった……っ!」
嘘じゃないんだって、
これは現実なんだって実感したくて
目の前のしょーちゃんに腕を伸ばした。