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【S×A】だから人生は素晴らしい

第9章 だから人生は素晴らしい








ドアを開けた瞬間

その後ろ姿だけで、圧倒される存在感

威圧的な空気





それでも、何処か清々しいのは

すべてを覚悟したからか。





「なんだ……どうした?」




足元から頭まで俺の姿を見ても

もう、何も言わなくなった。

スーツを着ない普段着のまま、此処に訪れるなんて有り得ないだろうに。






「今日は大事な約束があるから

ちゃんとした身形で来いって言ってましたね」

「……わかってるなら、どうして……」

「もう、止めにしませんか。

無意味でしょう。こんな俺を連れ回しても。

いくら見掛けを良くして誤魔化した所で、直ぐにボロが出る」







検査の結果は何の異常も見つからないのに

生活に必要な事以外は忘れてしまってる

貴方が俺に教えた全てを




今目の前にいるのは、この人にとって不要なゴミと全く同じ

1年、掛けたんだ。

もう、充分過ぎるでしょう。俺が無能だとわかるのには……





「彼女にも見捨てられました。

正式に婚約解消したいそうです」

「……そうか」

「役に立たないなら、俺は必要ない人間なんだって
きちんと理解してます。

だから、……お世話になりました」






会社を継ぐ為だけに引き取られたんだ

それ以外の何でもない

愛情を注がれるような親子の関係なんて、ここには存在してなかった






「貴方に教わった、

会社の理念もスキルもノウハウも…

何も覚えてない」

「……何も、覚えてない…か」






真っ直ぐに俺を見る視線を逸らさず

そう伝えた




この人は気付いてるだろう

何もかも……







「……本当に後悔しないのか」

「しませんよ。

やっと自由になれます」

「……そうか。

好きにしなさい」

「……ありがとうございました」





もう2度と、この人とこうして顔を合わせる事はないだろう

背中を向けた俺を

この人はどんな風に思って見てるのか






もう視線を逸らされたのか

何か別の感情を少しは抱いてくれたのか






でも、もう


そんな事は関係ないけれども








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