第9章 だから人生は素晴らしい
沢山の管をつけられたまま、ベッドに横たわるしょーちゃん。
顔にも身体にも包帯が巻かれ、痛々しい姿にまた泣きそうになる。
手術室から出て来て半日。
意識はまだ戻らない。
生命には別状ないってお医者さんは言ってたけど……
ベッドの傍ら、ただしょーちゃんを見てるだけしか出来ない自分。
もどかしくて情けなくて……不安で……怖くて……
「……すみません、ちょっと宜しいですか」
ノックと共に開かれたドアから覗いたのは、知らない男の人。
「アイバマサキさん…ですよね?」
表情を強ばらせたまま俯くと、胸ポケットから出した手帳を見せられた。
「…警察の、ひと…ですか」
「昨晩、ナイフを持った男が逮捕されました。
貴方の名前を呼んで取り乱すばかりで、……事情を聞きたいのですが……」
「え…」
「この男に見覚えはありますか」
目の前に出された1枚の写真
どくんと跳ねた心臓が早鐘を打つ。
「せんぱい……」
「お知り合いですか?
恐らく、暴行事件の犯人かと思われます。
被害者が運ばれた時間帯も場所も重なりますので」
先輩が……しょーちゃんを?
俺のせいだ……
「被害者の櫻井さんの御家族からも捜索願いが出ています」
「え……」
「彼の婚約者の女性、ご存知ですか?
貴方からも色々伺いたいのですが」
捜索願い……?
先輩の事も……もしかして全部……
しょーちゃんの側から離れるのには躊躇ったけど、そうするしかなくて。
しょーちゃんの寝顔に、待っててと声を掛けて、
言われるがままその場を後にした。