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【S×A】だから人生は素晴らしい

第8章 ハリボテノシロ







しばらく動けなかった。


凛とした真っ直ぐな態度で、最後は笑ってくれたちゃん



閉じたドアの向こうで、
きっとまた泣いてるんだって思うけど



もう俺に出来ることは、
何があってもしょーちゃんといることなんだって思う。







のろりと部屋に戻って

温くなった琥珀色の液体をじっと見つめた。




……こんなこと、ちゃんにさせるなんて

思いつくのはひとりしかいない。




俺の所に来た時の、あの威圧的な瞳が鮮明に浮かぶ。


本当に好きなら、相手の苦しむような事は出来ないって、そんな風に思ってた。


だからこそ、ちゃんの決断だって
痛いくらいわかる。






でも、その片方で

しょーちゃんの未来を奪ってでも

側にいることを選んだ俺は、きっと彼女と変わらない。



避難なんて出来ない。

婚約者を奪われた彼女からしたら、俺は恨まれて当然なんだから。







液体をシンクに流し

勢い良く蛇口を捻る。



空になったカップの上で


シンクに頭を突っ込み、冷たい水を浴びた。




こんなことしたって、何にも流せやしない。



そんなのわかってる。








キュッと蛇口を閉じて、水を滴らせながら、

干してたタオルを手にして頭に被った。





壁の時計に目をやると

帰宅時間まで1時間ほど。




ドアを開けた瞬間に
“ただいま。腹減ったー”ってネクタイ緩めて

同じに顔も緩んで、外では見せない顔になる。



今日も

明日も


この先ずっと。


その笑顔の隣にいるのは、俺だけだって信じたいから……








「早く用意しなきゃ」





冷蔵庫を開け食材を取り出しながら、

もっと強くならなきゃって、また思った。





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