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【S×A】だから人生は素晴らしい

第8章 ハリボテノシロ





肩を震わせながら土下座をしたちゃんに

どうしてあげたら、なんて声を掛けたら良いのか、正しい答えなんてわからなくて……

曖昧な優しさは、傷つけるのも知ってる。

それでも、そんな事気にするより先に自然と身体が動いてた。




小さな身体を包み込んで、背中をそっと撫でる。



「こんなことやめて」

「だって私はっ!」



どれだけ悩んで此処に来たのか、その表情を見たらわかるよ。

ひとを傷つけてばかりの俺だから気付くことだってある。

お願いだから、自分を責めたりしないで。




「大丈夫だよ。ありがとね」

「マサキさ…」

「しょーちゃんと話すから。
それに、ふたりでいることが簡単じゃないこと…ちゃんとわかってるから」




俺を見上げる瞳は、不安げに揺れてるけど
大丈夫だからって、もう一度笑って頷いてみせた。


理解されるような関係じゃない。

そんな事望んでもない。


ただふたりで、素直に生きたいと思ったんだ。

その為なら、どんな困難だって痛みだって受け入れる覚悟出来てる。



「俺らは大丈夫だけど…」

「私は、大丈夫です。

私…マサキさんが思ってるほど弱くありませんから」



涙を拭いながら真っ赤な目をした彼女は、漸く笑顔を浮かべた。

精一杯に強がる彼女は、出会った頃のあどけない表情とはまた違う。

強い意思を持った女の人に見えた。




「私、帰ります」

「え、しょーちゃんには会わなくていいの?」


「今は…いいです。
恋敵に会うのはちょっと辛いかも」




ふふっと、俺の目を見て悪戯っぽく笑うと、

鞄と上着を手に立ち上がった。



「あ、ありがとね。

来てくれて!」

「お礼を言うの、オカシイですよ」

「うん…でも、ありがとう」



彼女の想いを受け入れることは出来なかったけど、
好きだって言ってくれたのは、嬉しかったよ。

だから、この先、俺なんかよりずっとイイ男と出会って、幸せになって欲しい。

ちゃんにはその権利があるんだから。





「…マサキさん、

さよなら」


「うん……さよなら」



“またね”の意味を含まないサヨナラ

次会えるかどうかわからない。



でもね。いつか、笑顔で会えたらいいなって思う俺は

やっぱり狡いのかな。






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