第8章 ハリボテノシロ
時間通りにバイトを上がって、帰り道の商店街に寄る。
そんなに大きくはないけど、昔ながらの肉屋や八百屋さんがあって
顔見知りになったお惣菜やのおばさんは、いつもサービスしてくれる。
今日の晩御飯、何にしよっかな。
そういえばしょーちゃん、魚が食べたいって言ってたよなぁ。
フライ?煮付け?
あ、お刺身のがいいかな。
それにお味噌汁と……
おかず、足んないかなぁ。どうしよう。
そう考えて歩いてる自分に気付いて、何だか可笑しくなる。
……なんて幸せな悩みなんだろ。
ビニール袋を片手に、マンションまで歩くと。
心臓が止まりそうになった。
見覚えのある人影に、思わず息を呑む。
俺らのことなんか誰も知らないこの場所に、どうして……いるの?
騒ぎ出す心臓。
必死に平常心を装って、笑顔を向けた。
「ちゃん…
どうしてここに……」
久しぶりに会った彼女は、元気がなくって。
少し痩せた気がした。