第7章 願うのはひとつ
洗い物を中断して、玄関に向かったしょーちゃんを慌てて追い掛けた。
「行ってらっしゃい!
気をつけてね~」
「お前もな。
じゃ、行ってくる」
笑顔で見送って、ドアが閉じたと同時に
よし!と気合を入れる。
「俺も用意しなくっちゃ」
しょーちゃんよりいつも少しだけ早起きして、朝ごはんを用意する。
準備出来たらしょーちゃんを起こして、一緒に食べる。
そんなゆっくりもしてられないけど、
今日の予定なんかを連絡しあって。
電車通勤のしょーちゃんを見送ってから、俺も出掛ける準備をする。
俺のバイト先は、歩いて20分の
カフェも併設してるペットショップ。
急にバイトの子が辞めてしまったみたいで、直ぐに採用して貰えて助かった。
「火の元オッケー。
戸締りっと」
周りを見渡し、最後に電気を消して
スニーカーに足を突っ込んだ。
「今日もさっぶいなぁ」
鍵を掛けて、ポケットに鍵を入れたついでに、両手も突っ込む。
少し駆け足に階段を駆け下りて
アスファルトを踏み締めた。
冷たい空気が耳を劈く。
目の覚めるような感覚は嫌いじゃなくて、
商店街のショーウインドウに映った俺は笑ってる。
毎日同じ繰り返し。
休みが合えば、ふたりで朝寝坊して、
朝昼兼用のご飯たべて。
ふらっと散歩して、帰りには夕飯の買い物して。
なんて、幸せなんだろ。
……やっと掴んだ幸せは、永遠に続くなんて
そこまで考えてはなかったけど……
しょーちゃん。
やっぱり俺は、まだ赦されてはなかったんだよ。
普通の幸せなんて、望んじゃダメだったんだ。