• テキストサイズ

【S×A】だから人生は素晴らしい

第7章 願うのはひとつ





「それ、ホントなの?」



ここ数日、ママはずっと不機嫌だったから
何かがあったのはわかっていたけど。


まさか、お兄ちゃんが…婚約解消したなんて。


「藤堂さんとは、マリッジブルーみたいなものだってことになってるわ。
アリサさんもお若いのに、待ってますって理解して下さって。
あんな健気で可愛らしいお嬢さん、あの子には勿体ないくらいなのに…」

「お兄ちゃんは?」

「連絡取れないから困ってるのよ。
会社も辞めるって…携帯まで解約してるし!

もし、連絡来たら教えて頂戴ね」



当の本人がいなくなったっていうのに

式の打ち合わせだって、ママは出掛けてった。



途端に静かになった部屋の中。

冷めた朝食のオムレツに目に入った。



マサキさん、お兄ちゃんに作ってあげてたよね。


ふたりは今、一緒にいるってこと?



だから、お兄ちゃんは全てを捨てて出て行ったの?




地位も名誉も

これまで築いてきたもの全部

婚約者も家族も全部捨てて?

約束された未来よりも、マサキさんといる事を選んだんだ。




……何処かで思ってた。

真面目で無駄な事を嫌うお兄ちゃんが、

マサキさんを選ぶわけないって。



何もかもを犠牲にするなんて、出来るわけないって。




ふたりを認めるなんて、私の気持ちはそこまで整理出来ていないけど。

ただ、誰にも祝福されないのに、
一緒にいる事を選んだお兄ちゃんとマサキさんのことを考えたら

胸が痛くなった。



本当にそれで幸せになれるの?






休日だというのに、無気力にひとり

家の中で過ごしていると…



鳴り出した着信音に大袈裟に反応してしまった。

お兄ちゃん!?




知らないナンバーに確信して、通話ボタンを押すと

予想外の人の声が耳に響いた。




「…わかるかしら。私、アリサです。

相談したい事があるの。会えるかしら?」

「……あの、私に相談って……」

「わかってるでしょ?

好きなのよね?あの人のこと」




“協力してあげる”そう言われた時の事が頭を過ぎった。

美しい微笑みは酷く冷たく見えて怖かったはずなのに。




幸せになれる保証もないふたりの選択を受け入れられない自分が、

彼女の話に頷いてた。




/ 212ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp