第7章 願うのはひとつ
ドアが解除された音に気付いて、ソファーから腰を上げると
「あー、疲れたーーっ」
そう大袈裟に声を上げて、
ジャケットを脱ぎながら部屋に戻ってきたしょーちゃん。
そのまま、備え付きの冷蔵庫を開けて
取り出した缶ビールを勢い良く飲み出した。
「真っ昼間っから大丈夫?」
「はーーっ…何が?
大丈夫に決まってんだろ。会社辞めたし、乾杯だよ。ほらっ」
ニッと笑って、新たに出した缶を渡してくる。
……俺も笑顔で応えるとそれを開けた。
缶を傾け喉を鳴らす横顔は、投げやりなだけじゃないけど
何処か落ち着かないようにも見える。
俺の心情が多少影響してるせいかも知んないけど、そんなの当たり前だ。
自分のいた世界を手放してきたんだから。
「シャワー浴びてくるわ」
「あ、…うん」
「お前も浴びる?」
「え…」
「はは。ジョーダンだよ」
テーブルに缶を置くと、既に飲み干した空の音が響く。
しょーちゃんはそのまま浴室へと向かってった。
俺はそれを見送りながら、飲みかけの缶ビールを一気に流し込む。
勢い良く傾けたせいで流れた液体が、口端から漏れ首筋を伝う。
それを拭いもせずに、水音の響いてるその個室へ近付いた。
シャツもジーンズも、パンツも脱ぎ捨てドアを開くと
直ぐに気付いたしょーちゃんが
濡髪の隙間から俺を覗く。
「俺も、一緒にいい?」
「……来いよ」
緩んだ口元に、引き寄せられるように唇を重ねる。
水音に交じって絡め合う卑猥な音が浴室に響き始め、
熱いシャワーを浴びながら、身体の芯から素直に反応を示し出す。
お互いに腰を擦り付け、視線を絡めるとまた唇を貪った。
「ん、ふっ…はぁ…っ、あ
しょ、ちゃぁ…」
「まさ…き…っ」
覚悟に嘘はないのは知ってる。
だけど、不安なのは仕方ないよ。
それを出さないようにって、意識してくれてんのもわかってる。
だからせめて
優しくなくたって、ちゃんと理解してるから大丈夫だよ。
全部全部、受け止めてあげるから
欲だけでもせめて、俺にぶつけて。