第6章 終わりの足音
無視することだって、当然選択出来たのに
こうして此処にいる事実。
ドアをノックする段階で躊躇ったって、もうそれは無駄な足掻きで……
離れることを選んだ。
居るべき場所に戻った。
それを選んだのは自分なのに、俺は期待してたんだ。
もうひとりの俺はそんな自分を嘲笑ってる。
でももう、そんなのどうでもよかった……
しょーちゃんに会える。
しょーちゃんも俺に会いたかった?
何度も身体を重ねても、しょーちゃんが何を考えてるかなんてわからなかった。
ほんの少しでも、俺を想って抱いてくれた事はあった?
居なくなった俺を思い出す事はあった?
……ギリギリだったのかも知れない。
押さえ込んだままの感情は、日を追うごとに薄れるどころか、
楽しかった出来事ばかりが鮮明に蘇って……
“トントン…”
廊下に響くノック音
暫くすると内側から開いたドア。
息を呑み、その中を覗くと
其処に居たのは……
「……お久しぶり。
待ってたわ」
「……」
一気に戻される現実。
……そうだよね。
しょーちゃんが俺を探して会いたがってるなんて、
そんなの、ただの都合いい幻想に過ぎなかったんだ……
「きっと来ると思ってたわ」
薔薇のように綺麗なひと
しょーちゃんの隣に居るべき存在
俺なんかじゃなく、この人となら
しょーちゃんは幸せになれるんだ。
「あ、の……何か用ですか?」
「……大事な話があるの。
貴方の大事な人を幸せにする為よ。
“今度こそ”協力してくれるわよね?」
薔薇には棘があるから
その美しさは守られるのかな……
ぼんやり、そんなこと思ってた。