第6章 終わりの足音
インターホンを押しても反応がなくて、暫くして仕方なく鍵を取り出した
開けたドアから漂う雰囲気は、暗くシンとしていて
人の気配なんてない
「マサキ?」
片付いた部屋は閑散としていて
嫌な予感がした
勝手に出てくのは止めろって言ったのに……どうして裏切るんだよ
自分の事は棚に上げて、苛立ちばかりが湧き上がる
「なんでだよ……」
フローリングに蹲り、吐いた言葉が宙に消える
抱え込んだ頭に力を入れると
無の空間に空気が流れた
カチャリと控えめに空いたドア
振り返り、近付いてくる足音に息を飲むと
「……しょーちゃん?
どうしたの?そんなとこに座り込んで」
「マサキ…」
「ご飯作れなかったからさ、
お弁当買ってきたんだけど。良かった?」
「弁当…?」
マサキの持ち上げた袋には、弁当が2つ入ってんのが透けて見える
なんだ……俺の早とちりか
安堵してる自分が内心可笑しくて、その場を立ち上がる
「お味噌汁だけでも作ろうか」
俺の真横を通ったマサキ笑顔に、俺もつられて笑いそうになったけど
ふわりと漂った見知らぬ匂いに、
一瞬で身体が強張る
マサキの後ろ姿を見つめ、自分でも制御出来ない感情が行動に変わる
「……しょ、ちゃん……?」
「なぁ、たまには此処で立ったまんまやんねぇ?」
「ちょ、危な……お味噌汁作っ」
「そんなんいらねーから」
背後から身体を覆い、無防備に晒された首筋に歯を立てた
……何処行ってたんだよ
なぁ、誰に抱かれてきた?
欲と苛立ちが渦巻く中
無理矢理押さえ付けた身体が、この時震えていた事に
俺は気付けてなかった。
朝目覚めた時にはもう、アイツの姿は何処にもなくて
残されていたのは、小さなメモ用紙の“ありがとう”の一言と
ちょっと味の薄い味噌汁だけだった。